東京五輪日本代表選考会敗退から3ヶ月、ハヤテの胸中にはさまざまなものが去来したようです。
痛めた足首をごまかしつつの練習、断たれた五輪への夢、将来への不安など、これまで競技頂点を目指し一直線で進んできた彼にとって、大きな人生の転換期となる可能性もありました。
実際、僕と息子という親子の会話の中では、「もう引退し、卒業後は一般就職し、趣味で他の競技でもしようかな」というような「人生のプランB」の話などもありました。
もちろん、ハヤテはもう十分に戦ってきたのだから、僕は止めるつもりもありませんでした。
さて、五輪選考会後、最初の公式戦はシーズン最終章の全日本選手権でした。五輪は逃したものの、全日本学生選手権準優勝者として全日本選手権の出場権は獲得しており、「最期の戦いになるかもしれない」、という想いで臨んだそうです。
全日本選手権の出場資格は、前年の全日本メダリスト4名、全日本社会人上位2名、全日本学生上位2名、全日本高校生上位2名の計10名で、ハヤテはノンシード、一つ勝って準々決勝で前年の全日本チャンピオンと対戦、というかなり苦しい位置でのトーナメントとなりました。
なお、この全日本選手権から、東京五輪関係は終わり、次の世界選手権や五輪に向けての戦いになります。
試合開始。
準々決勝の対戦相手は、前年の全日本チャンピオン、前々年の準優勝者という、名実ともに同階級のトップ選手でした。
試合は3ラウンドまで押され気味でしたが、点を奪われたらすぐに取り返す、の連続で、最終3ラウンドラスト1分での点差は僅か2点でした。
ルールとして、正拳1点・中段蹴り2点・回転蹴りと上段蹴り3点・上段回転蹴り4点ですので、一撃当たれば、まだわかならい状況です。
ちょうど、ラスト1分、ハヤテの左ハイが直撃、点差をはじめてひっくり返します。
そして、そのまま点差を離していき勝利しました。
準決勝の相手は新鋭の高校生チャンピオンで、地味な間合い合戦となり、中段蹴りと正拳でポイントを積み上げて僅差で勝利しました。
決勝の相手は、東京五輪日本代表選手。テレビカメラも数台回り、緊迫した雰囲気のなかでの戦いになりましたが、リーチで圧倒的に勝る相手を攻めきれず敗退となりました。
全日本選手権の優勝者と準優勝者は強化指定選手になり、さまざまな強化合宿、海外遠征が始まります。
とりあえず、ハヤテもまだ一年は戦い続けることになりそうです。
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