女性のためのバーベルトレーニングについて詳しく解説していきます。女性にとってフリーウエイトトレーニングは、やや敷居が高い現状もありますが、やはりベンチプレス・デッドリフト・スクワットなど「筋トレBIG3」と呼ばれる種目は効果が高いので、ぜひ取り組んでいただきたいものです。
本記事ではBIG3メニューを中心として、各筋肉部位別のバーベル種目を解説するとともに、具体的な一週間のトレーニングプログラムも例示していきます。
目次
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女性が筋力トレーニングに取り組むための基礎知識
女性が筋力トレーニングに取り組むにあたり、まず知っておくべき知識が、①筋肉の正しい名称と作用、②筋繊維の種類と特徴とトレーニング負荷回数設定、③超回復理論に基づいたトレーニング頻度、④実施するトレーニング方法の長所・短所、の四点で、これらを加味して、⑤具体的なトレーニングメニュー、を実施していくことが重要です。
①筋肉の正しい名称と作用
女性に多く使用されている筋肉の俗称の正式名称は以下の通りです。
主たる骨格筋の正式な名称
俗称 | 正式な筋肉名称 |
胸の筋肉 | 大胸筋(だいきょうきん) |
背中の筋肉 | 広背筋(こうはいきん) |
首の筋肉 | 僧帽筋(そうぼうきん) |
肩の筋肉 | 三角筋(さんかくきん) |
二の腕裏の筋肉 | 上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん) |
二の腕前の筋肉 | 上腕二頭筋(じょうわんにとうきん) |
お腹の筋肉 | 腹筋群(ふっきんぐん) |
腰の筋肉 | 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん) |
お尻の筋肉 | 臀筋群(でんきんぐん) |
太ももの筋肉 | 大腿四頭筋(だいたいしとうきん) |
内ももの筋肉 | 内転筋群(ないてんきんぐん) |
裏ももの筋肉 | ハムストリングス |
ふくらはぎ | 下腿三頭筋(かたいさんとうきん) |
筋力トレーニングの対象となる主な骨格筋は、その連動性と共働関係から以下のようにグループ分けされるのが一般的です。それぞれの筋肉名称と主な作用は下記の通りです。
1.上半身前面(押す動作)のグループ
大胸筋:上腕を前方に押し出し閉じる
三角筋:上腕を上・前・横・後ろに上げる
上腕三頭筋:肘関節を伸展させる
前腕伸筋群:手首関節を伸展させる
腹筋群:体幹を屈曲・回旋させる
このほかに、小胸筋・前鋸筋・肘筋などの深層筋も含まれます。
2.上半身後面(引く動作)のグループ
僧帽筋:肩甲骨を引き寄せる
広背筋:上腕を上・前から引き寄せる
上腕二頭筋:肘関節を屈曲させる
前腕屈筋群:手首関節を屈曲させる
脊柱起立筋:体幹を伸展させる
このほかに、菱形筋・大円筋・回旋筋腱板。上腕筋などの深層筋も含まれます。
3.下半身前面(押す動作)のグループ
腸腰筋群:股関節を屈曲させる
大腿四頭筋:肘関節を伸展させる
下腿三頭筋:足首関節を伸展させる
4.下半身後面(引く動作)のグループ
臀筋群:股関節を伸展させる
ハムストリングス:膝関節を屈曲させる
内転筋群:大腿を内転させる
▼女性のための筋肉図鑑
②筋繊維の種類とトレーニング目的別の負荷設定
筋トレの対象となる骨格筋は筋繊維から構成されており、その筋繊維には主に三種類があります。そして、それらはそれぞれ異なる収縮特性を持っており、トレーニング目的に合わせてターゲットにする筋繊維を考慮する必要があります。
遅筋(遅筋繊維Ⅰ)
持久的な(持続的な)収縮の主体となる筋繊維で、筋トレによってあまり筋肥大しない特性を持ちます。このため、ダイエット系トレーニングで対象となる筋繊維です。
筋力トレーニングでは20回以上の反復回数で限界が来る、軽めの重さ(低負荷設定)でセットを実施します。
速筋(速筋繊維Ⅱa)
持久要素もある瞬発的収縮の主体となる筋繊維で、筋トレによって中程度に筋肥大する特性を持ちます。このため、ボディメイク系トレーニングで対象となる筋繊維です。
筋力トレーニングでは12~15回の反復回数で限界が来る、やや重めの重量(中負荷設定)でセットを実施します。
速筋(速筋繊維Ⅱb)
瞬発的な運動において爆発的な速い収縮(Fast)をし、グリコーゲン(Glycogen)を消費することからFG筋とも別称されます。レジスタンストレーニングで鍛えると強く筋肥大します。陸上競技で例えるなら、100~200m走に必要な筋肉です。
筋力トレーニングでは6~10回の反復回数で限界が来る、かなり重めの重量(高負荷設定)でセットを実施します。
一般的な女性のトレーニングの負荷回数設定
このようなことから、一般的な女性の筋力トレーニングにおいては、基本的には遅筋(遅筋繊維Ⅰ)をターゲットに20回以上の反復回数で限界がくるような低負荷高レップスでセットを実施し、部分的なボリュームアップや筋力アップを狙う部位は速筋(速筋繊維Ⅱa)をターゲットに15回前後のレップスで実施します。
なお、パワーリフティング競技など瞬発力を要するスポーツの補助目的で筋力トレーニングを行う場合は、速筋(速筋繊維Ⅱb)をターゲットにして高負荷トレーニングを行います。
厚生労働省による筋繊維に関する記載
骨格筋を構成している筋繊維には大きく分けて速筋と遅筋の2種類があります。速筋は白っぽいため白筋とも呼ばれます。収縮スピードが速く、瞬間的に大きな力を出すことができますが、長時間収縮を維持することができず張力が低下してしまいます。遅筋は赤みがかった色から赤筋とも呼ばれます。収縮のスピードは比較的遅く、大きな力を出すことはできませんが、疲れにくく長時間にわたって一定の張力を維持することができます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-026.html
③超回復理論にのっとったトレーニングプログラム
筋力トレーニングを行い筋繊維に負荷をかけると、筋繊維はわずかな裂傷を負い、一定の回復期間の後にトレーニング前よりも強く・太くなって回復します。この生体反応を「超回復」と呼び、筋力トレーニングとは、計画的に超回復を繰り返すことにより筋肉を強くしていく行為です。
このため、筋肉に対してレジスタンス負荷をかける頻度・間隔には十分に留意してトレーニングプログラムを組み立てる必要があります。
骨格筋の超回復期間には、それぞれ固有の回復時間があり、それは年齢や性別によって左右されますが、20~30代男性の場合、おおよそ以下のようになります。
筋肉部位ごとの超回復期間
・大胸筋:48時間
・三角筋:48時間
・上腕三頭筋:48時間
・僧帽筋:48時間
・広背筋:72時間
・上腕二頭筋:48時間
・腹筋群:24時間
・脊柱起立筋:72時間
・大臀筋:48時間
・大腿四頭筋:72時間
・ハムストリングス:72時間
・前腕筋群:24時間
・下腿三頭筋:24時間
なお、加齢とともに超回復期間は最大2倍程度まで長くなります。また、女性は男性に比べると筋肉合成に関わるホルモン分泌量が少ないため、男性よりも超回復期間が長くなる傾向にあります。
このような、超回復理論にのっとり効率的に全身をトレーニングしていくためには、全身の筋肉を連動性によっていくつかのグループに分け、ローテーションで鍛えていく「部位分割法|スプリットトレーニング」が最適です。その具体的なローテーションの組み方は以下の通りです。
週2回のトレーニングの場合
①上半身・下半身の押す動作の筋肉
②上半身・下半身の引く動作の筋肉
週3回のトレーニングの場合
①上半身の押す動作の筋肉
②下半身の筋肉
③上半身の引く動作の筋肉
週4回のトレーニングの場合
①上半身の押す動作の筋肉
②下半身の押す動作の筋肉
③上半身の引く動作の筋肉
④下半身の引く動作の筋肉
厚生労働省による超回復とトレーニング頻度に関する記載
筋肉には疲労からの回復の時間が必要です。レジスタンス運動は標的の筋肉に負荷を集中する運動ですから、その筋肉に十分な回復期間としてトレーニング間隔をあける必要があります。毎日行うのではなく、2-3日に一回程度、週あたり2-3回行うくらいの運動頻度が推奨されます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-058.html
筋肉はレジスタンス運動を行うと筋線維の一部が破断されます。それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になります。これを「超回復」と呼び、これを繰り返すと筋の断面積が全体として太くなり筋力が上がります。筋力のトレーニングはこの仕組みを利用して最大筋力に近い負荷でレジスタンス運動し、筋が修復されるまで2~3日の休息ののち、またレジスタンス運動でトレーニングということの繰り返しによって行われます。
引用:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-092.html
④バーベルトレーニングの特性
全てのウエイトトレーニングの基礎となり、また、もっとも効果の高い筋力トレーニングがバーベルトレーニングです。両手でウエイトを扱うため高重量が扱いやすく、動作起動が完全に自身で制御できるため個人の特性に合わせたトレーニングの実施が可能です。
反面、動作フォームなど技術の習得が必要となり、専門家の指導下で実施することが必要になります。
また、バーベルトレーニングのなかでも「BIG3」と呼ばれるバーベルベンチプレス・バーベルデッドリフト・バーベルスクワットは、この3種目だけ実施していっても十分に全身の筋肉が強化できるとされています。
なお、パワーリフティング競技の3種目は、このバーベルベンチプレス・バーベルデッドリフト・バーベルスクワットの挙上重量によって競われます。
▼詳しいバーベルトレーニングメニュー
⑤具体的な週3回のトレーニングの実施方法
週1回目のトレーニング(上半身の押す筋肉)
➀バーベルベンチプレスを2~3セット
➁バーベルインクラインベンチプレスを1~2セット
➂バーベルショルダープレスを2~3セット
④バーベルアップライトロウを1~2セット
➄バーベルナロープレスを2~3セット
⑥バーベルフレンチプレスを1~2セット
⑦腹筋運動を2~3セット
週2回目のトレーニング(下半身の筋肉)
➀バーベルスクワットを2~3セット
➁バーベルスティッフレッグドデッドリフトを2~3セット
➂バーベルフロントランジを2~3セット
④バーベルサイドランジを2~3セット
週3回目のトレーニング(上半身の引く筋肉)
➀バーベルデッドリフトを2~3セット
➁バーベルベントオーバーローを2~3セット
➂バーベルショルダーシュラッグを2~3セット
④バーベルグッドモーニングを2~3セット
⑤バーベルカールを2~3セット
⑥腹筋運動を2~3セット
筋肉部位別のトレーニング方法
大胸筋のトレーニングメニュー
①腕立て伏せなど自重トレーニングでアップ(1セット)
②バーベルベンチプレスなど複合関節種目を行う(3セット前後)
③ダンベルフライなど単関節種目で仕上げる(1セット)
④バーベルプルオーバーなど胸郭トレーニングを行う(1セット)
▼詳細記事
大胸筋の女性向き種目個別解説記事
バーベルベンチプレス
バーベルインクラインベンチプレス
バーベルデクラインベンチプレス
バーベルリバースグリップベンチプレスmediaandwomen.orgより
三角筋のトレーニングメニュー
①パイクプッシュアップなど自重トレーニングでアップ(1セット)
②バーベルショルダープレスなど複合関節種目を行う(2セット前後)
③サイドレイズ系種目やリアラテラルレイズ系種目など単関節種目で仕上げる(1セット)
▼詳細記事
三角筋の女性向き種目個別解説記事
バーベルショルダープレス
バーベルアップライトロウイング
バーベルフロントレイズ
バーベルフェイスプルmediaandwomen.orgより
上腕三頭筋のトレーニングメニュー
①ベンチディップスなど自重トレーニングでアップ(1セット)
②ナローベンチプレスなど複合関節種目を行う(2セット前後)
③バーベルフレンチプレスなど単関節種目で仕上げる(1セット)
▼詳細記事
上腕三頭筋の女性向き種目個別解説記事
mediaandwomen.orgより
背筋群のトレーニングメニュー
①斜め懸垂・懸垂など自重トレーニングでアップ(1セット)
②バーベルデッドリフト・バーベルベントオーバーローなど複合関節種目を行う(3セット前後)
③バーベルシュラッグなど単関節種目で仕上げる(1セット)
④バーベルグッドモーニングなど脊柱起立筋の種目を行う(1セット)
▼詳細記事
背筋群の女性向き種目個別解説記事
バーベルデッドリフト
バーベルベントオーバーロー
バーベルショルダーシュラッグ
バーベルプルオーバーmediaandwomen.orgより
上腕二頭筋のトレーニングメニュー
①逆手懸垂など自重トレーニングでアップ(1セット)
②バーベルカールなど単関節種目を行う(3セット前後)
▼詳細記事
上腕二頭筋の女性向き種目個別解説記事
バーベルカール
バーベルドラッグカール
バーベルプリチャーカール
EZバーカール
バーベルリバースカールmediaandwomen.orgより
腹筋群のトレーニングメニュー
①ダンベルクランチなど腹直筋上部種目を行う(2セット)
②ダンベルレッグレイズなど腹直筋下部種目を行う(2セット)
③ダンベルサイドベントなど腹斜筋種目を行う(2セット前後)
腹筋群の女性向き種目個別解説記事
ダンベルクランチ
ダンベルレッグレイズ
ダンベルサイドベントmediaandwomen.orgより
下半身のトレーニングメニュー
①自重スクワットなど自重トレーニングでアップ(1セット)
②バーベルスクワットなど複合関節種目を行う(3セット前後)
③バーベルフロントランジなど大腿四頭筋種目で仕上げる(1セット)
④バーベルスティッフレッグドデッドリフトなどハムストリングス種目で仕上げる(1セット)
⑤バーベルサイドランジなど内転筋群種目で仕上げる(1セット)
▼詳細記事
下半身の女性向き種目個別解説記事
バーベルスクワット
バーベルフロントランジ
バーベルサイドランジ
バーベルスティッフレッグドデッドリフトmediaandwomen.orgより
さらに詳しい女性の筋力トレーニング
また、さらに詳しい女性向きの一週間プログラム例は下記の記事をご参照ください。
▼詳細記事
女性の部位別トレーニング一覧
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