バーベルトレーニングは、数ある筋トレ方法のなかでも最も効果的である反面、バーベルの扱いが難しく初心者の方には取り組みにくいのも事実です。
また、トレーニング歴の長い人に指導を受けると、どうしても「フルレンジ」にこだわりがちですが、初心者においては、無理にフルレンジのバーベルトレーニングを行うよりは、取り組みやすいハーフレンジ・ハーフスタイルから慣れていったほうがよい場合も少なくありません。
それらを踏まえつつ、各筋肉別の基本的なバーベルトレーニング種目を解説するとともに、ハーフレンジで行っても良い種目については、そのポイントなども解説していきます。
目次
■バーベルの基礎知識
●シャフト・スリーブ・プレート・カラーなどから構成される
バーベルは、シャフト(握る部分)・プレート(ウエイト)・スリーブ(プレートを取り付ける部分)・カラー(プレートを止める部品)から構成されており、パワーリフティングやウエイトリフティングなどのバーベル公式競技では、これら全てを足した重量が試技重量となります。
シャフトの太さは直径28mmで、スリーブには28mmと50mmのものがあります。前者をノーマルシャフト、後者をオリンピックシャフト(オリンピック競技で使用されることから)と呼びます。
プレートにも28mm用と50mm用があり、その重量は1.25kg・2.5kg・5kg・7.5kg・10kg・15kg・20kg・30kgが一般的です。また、カラーには1.25kg・2.5kg・5kgなどのものがあり、これらを組み合わせて2.5kg刻みで重量を作っていきます。
■全身の筋肉を分類
●上半身の押す筋肉・上半身の引く筋肉・下半身の筋肉
全身の筋肉部位別のバーベル種目を解説するために、まずは、全身の筋肉を簡単にご紹介します。全身の筋肉は、大きく以下のようなグループに分けられ、今回ご紹介するのは体幹の筋肉グループを除いた3つのグループのトレーニング方法です。
○上半身の押す筋肉グループ:大胸筋・三角筋・上腕三頭筋・前腕伸筋群など
○上半身の引く筋肉グループ:僧帽筋・広背筋。上腕二頭筋・前腕屈筋群など
○下半身の筋肉グループ:大臀筋・大腿四頭筋・大腿二頭筋・下腿三頭筋など
○体幹の筋肉グループ:長背筋群・腹筋群・腸腰筋群・回旋筋腱板など
なお、さらに詳しい筋肉名称と作用については下記のデジタル図鑑をご参照ください。
▼デジタル筋肉図鑑
【筋肉名称デジタル図鑑】各部位(胸筋・背筋・肩・腕・腹筋・脚)の名前・作用・筋トレ方法
■バーベルトレーニングの基本種目
●まずは筋トレBIG3を知ろう
バーベルトレーニングを行っていく上で、避けては通れない、また行うべき三種目が「バーベル筋トレBIG3」と呼ばれる基本種目で、この三種目さえ行えばほぼ全身が鍛えられます。その三種目と効果のある筋肉部位は以下の通りです。
○ベンチプレス:大胸筋・三角筋・上腕三頭筋
○デッドリフト:広背筋・僧帽筋・上腕二頭筋
○スクワット:大腿四頭筋・臀筋群・ハムストリングス
この一覧を見ていただければ、ほぼ全身全ての筋肉が鍛えられることがわかります。
●BIG3に追加する初心者向けバーベル種目
上記のバーベル筋トレBIG3では、ほぼ全身全ての筋肉が鍛えられると解説しましたが、「ほぼ」と書いたのには訳があります。
一つ一つの筋肉には、さらに細かい部位分けがあり、筋トレBIG3ではあまり効果のない部位も存在します。それが、以下の部位です。
・大胸筋上部(胸の上部分)
・広背筋側部(背中の横側)
・三角筋中部(肩の側面)
・上腕三頭筋長頭(腕の後ろ内側)
・上腕二頭筋短頭(腕の前の内側)
・内転筋群(太ももの内側)
ですので、全身をくまなく鍛えていく場合、筋トレBIG3に加えて上記の6箇所のトレーニング種目も行っていきます。
それででは、次の項目からは「上半身の押す筋肉」「上半身の引く筋肉」「下半身の筋肉」それぞれのバーベルトレーニング種目と初心者むけのポイントを解説していきます。
■上半身の押す筋肉グループのバーベル筋トレ
●大胸筋のバーベルトレーニング
読みかた:だいきょうきん
英語名称:pectoralis major muscle
部位詳細:上部|中部(内側)|下部
起始:鎖骨の内側|胸骨前面第2~6肋軟骨|腹直筋鞘前葉
停止:上腕骨大結節稜
・バーベルベンチプレス(筋トレBIG3)
大胸筋・三角筋・上腕三頭筋と上半身の押す筋肉グループ全体に効果の高いのが、筋トレBIG3の一つベンチプレスです。
肩甲骨をしっかりと寄せ、肘がバーの真下にくるようにコントロールして挙上を行うのがポイントです。
また、胸板がまだ十分に発達していない初心者の場合、筋トレ上級者のように「バーを胸につける」のは可動域が広がりすぎて肩に痛みを感じることも少なくありません。
ですので、「バーに胸をつける」ことにこだわらず、できる範囲でバーを下ろすことが大切です。
ただし、バーを胸につけていないにもかかわらず、重量を追求すると、もはやベンチプレスとは呼べない浅い動作の繰り返しになってしまいがちですので、少なくとも「肘が90度に曲がる」ところまではバーを下ろすようにしましょう。
▼コラム記事
【ベンチプレス】初心者にバーを胸につけろは無茶!まずはフォームをしっかりと
なお、ベンチプレスは上半身の押すトレーニング全ての基本となるバーベル筋トレ種目ですので、はじめから自己流でやらず、専門家の正しいやり方・フォームなどを知ってから取り組むことが大切です。
下記の記事は、パワーリフティング元全日本王者(種目別ベンチプレス世界二位)の方が、初心者がベンチプレスで100kgの壁を突破するまでにやるべきことを詳細に執筆した記事です。
是非、ご参照ください。
▼全日本王者執筆記事
・バーベルインクラインベンチプレス(大胸筋上部)
バーベルインクラインベンチプレスは大胸筋上部に対して効果の高い種目ですので、ベンチプレスの補助種目として数セット行うとよいでしょう。
強いブリッジを作ると挙上方向が通常のベンチプレスと同様になってしまうので、あまり高いブリッジはおすすめしません。
また、セット終盤で腰を浮かせがちですが、これも大胸筋上部に効果のある軌道からずれることになりますので、ベンチにしっかりと背中をつけて行ってください。
▼動画付き解説記事
【インクラインベンチプレス】大胸筋上部に効果的なバーベル筋トレ
●三角筋中部のバーベルトレーニング
読みかた:さんかくきん
英語名称:deltoid muscle
部位詳細:前部|中部(側部)|後部
起始:鎖骨外側前縁|肩甲骨肩峰|肩甲骨肩甲棘
停止:上腕骨三角筋粗面
・バーベルアップライトロー(三角筋中部)
三角筋の筋トレは、大胸筋や背筋群と隣接しているため負荷が体幹に逃げやすく、三角筋を的確に鍛えるのはやや慣れが必要ですが、このバーベルアップライトローは筋トレBIG3で鍛えにくい三角筋中部に集中的な効果がある上、あまりテクニックが必要なく、初心者の方におすすめの方法です。
上体を反らせたり、肩甲骨を寄せて背筋を使ったりしないように意識して行ってください。
▼動画付き解説記事
【バーベルアップライトロー】初心者におすすめの三角筋バーベル筋トレ
●上腕三頭筋長頭のバーベルトレーニング
読みかた:じょうわんさんとうきん
英語名称:triceps
部位詳細:長頭|外側頭|内側頭
起始:肩甲骨関節下結節|上腕骨後面|上腕骨後面
停止:尺骨肘頭
・バーベルトライセプスエクステンション(上腕三頭筋長頭)

ベンチプレス系種目のあとに、上腕三頭筋長頭を追い込むのに最適なのが単関節運動・アイソレーション種目がバーベルトライセプスエクステンション(バーベルフレンチプレス)です。
なお、肘を開きすぎると負荷が上腕三頭筋短頭(外側)に逃げてしまいますので、脇をしめて肘が開かないように動作するのがポイントです。
▼動画付き解説記事
■上半身の引く筋肉グループのバーベル筋トレ
●広背筋と僧帽筋のバーベルトレーニング
読みかた:こうはいきん
英語名称:latissimus dorsi muscle
部位詳細:上部|下部
起始:下位第6胸椎~第5腰椎の棘突起・肩甲骨下角第9~12肋骨|正中仙骨稜・腸骨稜後方
停止:上腕骨小結節稜
読みかた:そうぼうきん
英語名称:trapezius muscle
部位詳細:上部|中部|下部
起始:後頭骨上項線・外後頭隆起・頚椎棘突起|第7頚椎・第1~3胸椎棘突起|第4~12胸椎棘突起
停止:肩甲棘・肩峰
・バーベルデッドリフト(筋トレBIG3)
背筋群に効果が高く、基本トレーニングと言えるのが筋トレBIG3の一つでもあるデッドリフトです。足を閉じ気味にし外側でバーをグリップする「ルーマニアンデッドリフト」と足を大きく開き内側でバーをグリップする「スモウデッドリフト」の2種類があります。
手足の長い人は前者、短い人は後者が向いています。高重量を上げやすいのはスモウスタイルですが、かなりの技術と経験がひつようなルーマニアンデッドリフトのほうがおすすめです。
膝がつま先より前に出ないこと、胸を張り背中を反らせること、やや視線を上にすることが主なポンとです。また、高重量では左右の手を互い違いに保持するオルタネイトグリップがおすすめです。
また、初心者の方はフルレンジで行うのは、腰などを痛めるリスクが高いので、最後まではバーベルを下ろさないハーフレンジで慣れていくことをおすすめします。ただし、あまり浅いとデッドリフトの効果が得られませんので、バーのシャフトが膝より下になるところまでは下ろすようにしてください。
なお、デッドリフトもバーベル筋トレの基本となる種目ですので、はじめから自己流の癖をつけず、専門家による情報を知った上で取り組むことが大切です。
▼全日本王者執筆記事
・バーベルプルオーバー(広背筋側部)
バーベルプルオーバーは広背筋側部を集中的に鍛えられる、ほぼ唯一のバーベル筋トレ種目ですが、ちょっとしたフォームの違いで大胸筋にも広背筋にも効果のある変わった種目です。
このため、筋トレ中級者レベルの方でも、そのフォームの違いを把握していない場合も少なからず、初心者にとっては難易度の高い種目ですが、広背筋側部をバーベルで鍛えるためには、本種目しかありません。
大胸筋狙いのプルオーバーと広背筋狙いのプルオーバーの最大の違いは肘の角度とグリップ幅で、それは以下のようになります。
○広背筋:広いグリップで肘を伸ばすストレートアームプルオーバ
○大胸筋:狭いグリップで肘を曲げるベントアームプルオーバー
ですので、広背筋側部をターゲットにする場合は、グリップを肩幅以上に広くとり、なおかつしっかりと肘を伸ばして行ってください。
▼動画付き解説記事
【バーベルプルオーバー】大胸筋と背筋それぞれに効かせるフォームの違いを解説
・バーベルショルダーシュラッグ(僧帽筋)
僧帽筋を集中的に鍛えることのできるのがバーベルショルダーシュラッグです。肩甲骨を完全に寄せきることで僧帽筋も最大収縮します。
また、バーベルを下ろした時に背中を丸めると、負荷が分散するだけでなく、腰に負担がかかりますので注意してください。
▼動画付き解説記事
【バーベルショルダーシュラッグ】僧帽筋の基本筋トレを動画で解説
●上腕二頭筋短頭のバーベル筋トレ
読みかた:じょうわんにとうきん
英語名称:biceps
部位詳細:長頭|短頭
起始:肩甲骨関節上結節|肩甲骨烏口突起先端
停止:橈骨粗面
・バーベルドラッグカール
本来、アイソレーション種目(単関節運動)であるバーベルカールに肘を引きこむ動きを加え、背筋も動員するコンパウンド種目(複合関節運動)としたのが、こちらのバーベルドラッグカールです。
肘を後ろに引くため、手首へのねじれ負荷を抑えて限界まで上腕二頭筋短頭を追い込むことが可能です。
▼動画付き解説記事
■下半身の筋肉グループのバーベル筋トレ
●大腿四頭筋・ハムストリングスのバーベルトレーニング
読みかた:だいたいしとうきん
英語名称:quadriceps
部位詳細:大腿直筋|外側広筋|内側広筋|中間広筋
起始:腸骨下前腸骨棘・寛骨臼上縁|大腿骨大転子外側面・転子間線・殿筋粗面|大腿骨粗線内側唇|大腿骨前外側面
停止:膝蓋骨上縁・脛骨粗面|膝蓋骨上外側縁・頸骨粗面|膝蓋骨上内側縁・脛骨結節|膝蓋骨・頸骨粗面
読みかた:はむすとりんぐす
英語名称:hamstrings
部位詳細:大腿二頭筋長頭|大腿二頭筋短頭|半膜様筋|半腱様筋
起始:坐骨結節|大腿骨粗線外側唇・外側筋間中隔|坐骨結節|坐骨結節内側面
停止:腓骨頭|腓骨頭|脛骨内側顆・斜膝窩靭帯|脛骨粗面内側
・バーベルスクワット
大臀筋・大腿四頭筋・大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋といった下半身の筋肉全体に非常に効果の高いのが筋トレBIG3の一つでもあり「キングオブトレーニング」とも呼ばれるバーベルスクワットです。
膝がつま先より前に出ないこと、胸を張り背中を反らせること、やや視線を上にすること、斜め後ろにしゃがむことなどが主なポイントです。
初心者の方にとって、筋トレBIG3のなかでもフルレンジで行うのが最も難しいのはスクワットです。しっかりとしたフォームがとれないうちに、無理にボトムまで腰を下ろすフルレンジを行うと、腰や膝を痛める可能性が高くなります。まずは、ハーフレンジ・ハーフスタイルで慣れていきましょう。
ただし、あまりに浅いとスクワットの効果が激減しますので、膝を90度まで曲げる位置まではしゃがむようにしてください。
▼動画付き解説記事
【バーベルスクワット】下半身全体に効果の高いキングオブトレーニング
●内転筋群のバーベルトレーニング
読みかた:ないてんきんぐん
英語名称:adductors muscles
部位詳細:大内転筋|長内転筋|短内転筋|薄筋|恥骨筋
・バーベルサイドランジ(内転筋群)
太ももの内側にあるインナーマッスルの内転筋群は、横方向への足の開閉動作で使われるため、バーベルスクワットではあまり鍛えられない下半身の筋肉部位です。
その内転筋群に効果的なのがバーベルサイドランジで、伸ばしたほうの足を主体に動作すことがポイントです。
なお、インナーマッスルは高重量で鍛えても怪我のリスクが上がるだけですので、20回程度の高レップ低負荷でトレーニングを行ってください。
▼動画付き解説記事
【バーベルサイドランジ】内転筋群に効果の高いトレーニング方法
●下腿三頭筋のバーベルトレーニング
読みかた:かたいさんとうきん
英語名称:triceps muscle of calf
部位詳細:腓腹筋外側頭|腓腹筋内側頭|ヒラメ筋
起始:大腿骨外側上顆|大腿骨内側上顆|腓骨頭・脛骨後面
停止:踵骨隆起|踵骨隆起|踵骨隆起
・バーベルカーフレイズ(下腿三頭筋)

下腿三頭筋は前腕筋群と同じく、他の多くの筋肉部位と筋繊維の組成が違うので、20~30回で限界がくるハイレップの重量設定で行ってください。
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